三島由紀夫の『禁色』の表層と深層:仮相的表現と哲学的認識






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2011年10月27日(Thu)
三島由紀夫の『禁色』の表層と深層:仮相的表現と哲学的認識
「彼[檜俊輔:ひのきしゅんすけ]の作品に欠けている凡(あら)ゆる要素が日記の各頁に躍動していたが、それらをそのまま作品に移すことは、生の真実を憎む俊輔の態度に背くことであった。天稟(てんぴん)のどんな部分も、自(おのずか)ら流露する部分は贋ものだという確信を抱いていた。それにもかかわらずその作品が客観性を欠いていた原因は、彼が拠ったこのような創作態度の、頑なに失した主観的固執にあったのである。生の真実を憎むあまりに、それとあまりに対蹠(たいせき)的に照応した、いわば生身の裸体から鋳型をとられた彫像のごときものが彼の作品だった。」 

『禁色』(新潮文庫)、p. 18

 以上は、三島由紀夫の『禁色』の最初の箇所から引用したものである。これはよく知られた三島の創作方法を述べものである。これは表層である。私が述べたいのはこの作品で深層で語っているのは哲学的精神、哲学的知性であるということである。明らかに三島は近代、戦後近代の痴態を批判しているのである。この戦後近代批判を行なっているのは表面の語り手ではなく、三島の深層にある哲学的知性である。これはいわば表層では隠れているのである。表面の仮相ではなく、深層に測深しないとこの哲学的知性は認識できないと言えよう。

とまれ、今は三島が本作品で鋭敏な近代批判、近代的自我批判を行なっていること、それは彼の深層の哲学的知性に拠るということを述べるに留めたい。

また、この作品の言語表現はまた映像的であり、魂の視覚をもって外界を捉えている。そう、詩人の眼がここにはあるのである。

今、予見を言うと、三島の哲学は超越的哲学である。彼は超越的世界から語っているのである。三島文学はこの視点から解明される必要がある。単に仏教的視点からだけではない。そう、明らかにパラドクシカルな、イロニーの表現は、鋭敏な陰陽的視野から来ていると考えられる。

思うに、日本文学ないしは世界文学が貧弱になったのは、三島文学・哲学を的確に認識する文学者、作家の不在が原因である。大江健三郎は当然、理解できなかったし、村上春樹は問題外である。

そう、これまで、三島文学・哲学が理解されたことがあったのかと管見で思う。PS理論によってこそ、解明されると考えられる。


   




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カレンダ
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